ステップD8. 縁の半田

 《1》 縁仕上げの流れ
 ステンドグラス シェードは比較的柔らかい合金である半田で組み立てられているため、長く使っていると波打つように 変形してきます。特に直径40cm以上の大きなシェードで顕著です。 そのため、強度を増すために色々な補強がなされます。そのひとつが、真鍮パイプをリムとして使った縁仕上げです。
 今回は直径30cmの小型のシェードですので、このリムだけでも強度が出ます。 もし、直径40cm以上の大きなシェードを作る場合は、シェードの裏側に銅板のリブを這わせることもします。 言葉が良く似ていますが、リムは輪、リブは帯状の突起です。
 下図は、リムをシェードの縁に埋設するように取り付ける時の原理図(断面図)です(上下ひっくり返して描いてあります)。 この処理で、縁がしっかりして、同時に美しく仕上がります。
 @ まず真鍮パイプでできたリムを点止めで、縁(ボーダー)に固定します。
 A シェード内側に半田を厚く盛ります。
 B シェード外側に半田を厚く盛ります(ABの順序は逆でもかまいません)。
 C 適宜上面にも半田を盛り、周囲にコテを当てながら、リムを隠し、きれいな円弧断面になるように仕上げます。
リム埋設の概要
 《2》 リムの加工
 リムの材料として、外径3mm、内径2mmの真鍮パイプを用います。長さは1mほどです。 また、これは無くても大丈夫ですが、端点を結合するために、直径2mmの真鍮棒(長さ4cm程度)もあったら便利です。
 このパイプをサンドペーパーでよく磨いておきます。次に、シェードの縁に合わせて輪に曲げていきます。
真鍮パイプと真鍮棒 丁寧に輪にしていく
 パイプの余り部分は糸鋸で切断します。心持短めに切断するのがコツです。 次に、両端部に直径2mmの真鍮棒を半分ずつ挿入して、輪に結合します。 また、後で長さ調整のため、外すことも考えられるので、接着はしないで下さい。
余り部分は糸鋸で切断 輪に結合
 《3》 リムの点止め
 シェードの縁(ボーダーの縁)のコパーテープにペーストフラックスを塗り、半田メッキしておきます。 半田メッキとは、薄く銀色の色が着く程度に半田を付けておくことで、後々本半田しやすくなります。
 次に輪になったリムを縁に載せ、5cm間隔でペーストを付け、点止めしていきます。 スタート地点はどこでも良いですが、結合部付近は最後にしてください。
ボーダーの縁に半田メッキ リムの点止め
 点止めが全周の2/3程度終わった時点で、輪の大きさを再度確認します。 もし大き過ぎていたら、少しやりにくいですが、糸鋸で余分を切断してください。 もし短い場合は、結合部の真鍮棒がパイプの隙間を補完しますので、大丈夫です。 下の写真からわかるように、今回はパイプが少し短かったことに気が付きましたが、内部に真鍮棒が入っているので大丈夫です。
真鍮棒で補完
 《4》 半田の厚盛り
 真鍮パイプを包み埋設するように半田を厚盛りしていきます。スタートは、シェードの内側からでも外側からでも結構です。 半田ごての温度を少し低めにして、リブとボーダーとの隙間を埋めるように半田を落としていきます。 形が悪くても気にせず、ひたすら量を盛っていきます。 半田の消費量の目安は、半田を施した距離と、消費した半田棒(直径3mmの場合)の長さが同じになるくらいです。
 下図では、リムにペーストを塗り、隙間を埋めるように厚盛りしています。 あまり悠長に加熱していると、隙間から裏側へ半田がぼとぼと落ちてしまいますので、すばやく盛りましょう。
リムにペーストを塗る 内側に半田を盛る
 次に、面をかえて、外側にも同様に盛ります。このとき固定具(フォーム・ポジショナー)とモールドを再度用い、 シェードをモールドの上に軽くかぶせて作業します。 この段階では、モールドとシェードは密着しませんので、下図では、両者の間に新聞紙を挟んでガタをなくしています。
 外面の厚盛りが終わった時点で、リムの大部分は半田で覆われると思います。 足りない場合には、シェードを固定具から外し、裏返して置き、上面にもダメ押しで盛ります。
外側に半田を盛る
 厚盛りが終わっても、仕上げをしたわけではないので、表面はでこぼこして汚いです。
表面はきたならしくてもOK
 ここからは根気良く、縁を仕上げていきます。 ペーストをマメに塗り、何度もコテを当てて、縁がきれいな円弧断面になるように再加熱します。
 面倒がらずに、内側や上面、外側と、何度も向きを変えて、でこぼこを徐々にならしていきます。 半田が融けたときの表面張力と粘性を利用して、脱落しない程度に液状化させるのが、きれいな半田肌にするコツです。 また、半田ゴテを当てる面は、たとえ狭い面であっても、地面に対して水平になるよう、心がけてください。
内側から再加熱 上面から再加熱 外側から再加熱
 仕上げの半田コテを当てている様子を動画でご確認下さい。


動画(39秒)

 写真のように滑らかな縁が出来たら、完成です。
半田完
 《5》 サインを入れる
 オリジナルの作品に自分のサインを入れるのは、楽しみの一つでもあります。 パネルでは、グリザイユで書いて焼き付けたりしますが、コパーテープで作る方法も有り、立体作品に適しています。
 まず、サインを入れたい部分の油分(ペースト)を除去して、コパーテープが付きやすい状態にします。 ベンジンを染み込ませたティッシュなどでよく拭いてください。
 幅の広めのコパーテープ(1/4インチ幅など)を広めに貼り付けます。面積が広いときは、少しずつ重ねて、何枚も貼ります。 次に油性マーカー(マジック)でサインを書きます。 そして、サイン部分以外のコパーテープをカッターナイフで切り取り、剥がします。 後は、マジックをアルコールでふき取った後、残ったコパーテープにペーストを塗って半田を盛れば完了です。 テープの下部はガラスですので、半田コテは手早く当てて下さい。長々と当てていると、熱でヒビが入ります。 細かいサインの場合は、コテ先の尖ったところを突きたてて、細く盛るのがコツです。
コパーテープを広めに貼り 油性マーカーでサインを書き カッターで余分をはがし コパーに半田を盛る
 《6》 キャップの半田メッキ
 キャップも最後に黒く染めますので、前もって半田メッキしておきます。 まず、サンドペーパーで表面のみ良く磨きます。真鍮と言う金属は、良く磨かれると淡いページュになります。 孔の縁も、サンドペーパーをたたんだり、丸めて棒状にしたもので磨きます。
 磨き終わったら、ペーストを塗り、半田メッキします。キャップは体積も有り、なかなか温まりません。 半田コテをキャップに当ててしばらく熱が広まるのを待ちます。キャップは熱くなりますので、ラジオペンチやピンセットで持ちます。 十分に熱せられたキャップは、半田の伸びが良いので、ほんの少しの量でも、全面に広がります。 半田メッキのコツは、少量を薄く広く伸ばすことです。
キャップを磨く ペーストの塗布 十分に熱して半田メッキ3

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