大型電気炉の制作 <その10.融かしてみました>

 電気炉(窯)が出来て、いよいよフュージングの実施です。
 ずっと、大きな窯が手に入ったらやってみたいと思ってきた大判のフュージング。デザインだけで3日掛かりました。ステンドと勝手が違うので、小さなピースで試作とデータ取りを繰り返し、イザ本番。
 窯は800mm×500mmまでのフュージングが出来ますが、今回は最初ということで、250mm×370mmの小ぶりのパネルです。温度コントローラにプログラムを打ち込み、ON!
 順調に温度が上がっていきます...100℃、200℃、300℃...
 550℃で一旦停止。
 階段温度制御で最大765℃まで上げました。ここから冷却過程です。徐冷点は550℃に設定て15分間のアニーリング。ちょっと短かったかな、と思いましたが、後でもう一度窯に入れるので、その時はじっくりアニーリングしよう。
 そんで、最初の窯入れで出来たパネルです。

 なかなかイイではないですか。割れていないし。
で、さらに絵付けして2度目の窯入れ。
 順調に温度が上がっていきます...100℃、200℃、250℃...ぼすっ!
 なんか音がしたなあ(いやな予感)。
 そっと覗き窓から覗き込み...
 やっぱりなあ... 割れている。 無惨です。4分割ってところだなあ。」
 そう。前回の窯入れの時の徐冷が不十分だったようです。内部に歪が残っていたのでしょう。
 いい勉強になりました。
 でも、楽しいです。

大型電気炉の制作 <その9.テスト2>

 いよいよ実用テストに入ります。
 まず、グリザイユの焼付け温度の目安600℃です。グリザイユの焼付け温度は、ガラスで両持ち梁を作り、そのガラスが軟化して中央がたわみだす温度です。
 スパン4cmの両持ち梁を5セット作り、炉床の中央と4隅に置きます。これで、様子を見ながら600℃まで上げていきます。

 室温から600℃まで、わずか25分で到達しました。外部の周囲(蓋や側面、底面)を触っても全く熱くありません。かなりの断熱性能です。

 その後、600℃を5分間保持し、あとはOFFして自然冷却しました。サンプルのガラス梁は、炉床中央に置いた物は大きく7mmたわみ、4隅のはわずかに2~4mmたわみました。このままでは、温度ムラがありますので、運用時には、焼付け温度手前で10分ほど保持して、温度ムラをなくさなければならないことがわかりました。

 次に、フュージングの目安温度である800℃まで上げてみます。サンプルは、2.5cm×1cmのフューザブルガラスを2枚重ねたものです。これを炉床中央と4隅に置きます。

 800℃までは、45分で到達しました。その後800℃を10分キープし、OFFしました。この時点で外周部を触ってみましたが、温かい程度です。

 冷却後サンプルを取り出してみたら、ほぼ全部が同程度に丸くなりました。これなら実用上問題ありません。温度ムラも小さいことがわかります。

 ちなみに、冷却中に遅れて周囲に熱が伝わり、500℃付近に下がった時点で、周囲は触れなくなりました。
 テストの結果、問題点も浮かび上がりました。
 (1)セラミックボードに塗ったコーティングのベタック#900Bは、高温でひび割れて反り返ってしまいました。恐らくこのまま使い続けていたら、剥がれて落ちてきてしまいます。作り方を変えるか、コーティング材は他のものにした方が良さそうです。

 (2)一過性のことですが、最初にセラミックボードに熱が加えられたとき、250~300℃で内部の有機原料が燃焼します。このとき、臭くて目に沁みる煙が出るので難渋します。換気を確りしましょう。ただ、2回目の加熱からは煙は出ません(燃え尽きた場合)。
 今後も、使いながら問題点が出てくるかもしれません。ですが今の時点で、一応実用レベルのものが出来上がったのは嬉しいです。
 掛かった費用は以下のとおりでした。
・材料代:178,000円
・買い増した工具代:4,000円


 <<<実は>>>
 実は電熱線の抵抗値が気になって、新しいテスタを買って計ったんです。そうしたら、10.1Ωでした。200Vで19A流すためには、200÷19=10.53Ω必要なんです。つまり、0.43Ω少なかったんですね。抵抗値は、大きい分にはあまり問題ありませんが、小さいと事故に繋がる恐れがあります。
 そのことを電材屋さんに電話で言ったら、担当者は「製造誤差範囲内ですね。最初に『抵抗値重視』と仰ってくれれば、相応の対応が出来たんですが。」と言われました。その後、電話を上司といわれる人と代わってもらい、交渉の結果、なんとか足りない分0.5Ωほどを、送ってもらうことになりました。
 この経験から、
 今後電熱線を買うときには、電材屋さんの製造誤差を事前に聞いておき、その分をプラスして抵抗値で発注することが望ましいと思いました。また、多少割高になっても長めに発注し、ユーザーサイドで所望の抵抗値に切り直すのが間違いないでしょう。
 この記事を読んでいる電材屋さんがいましたらお願いしたいのは、
 コイルを密着巻きしていて、そのままでは仕上がり抵抗値を測定するのが難しいのであれば、治具でわずかに引っ張りながら計るなりして、「出荷前検査」をして欲しいです。

大型電気炉の制作 <その8.テスト>

 昨日から、テストに入っています。
 まず、本ちゃんの200Vを流す前に、100Vで100℃まで上げて、漏電、ケーブルの発熱、温度コントローラ不良、異臭、発煙等の無きことを確認しました。
 次に200Vで、同様の確認。そして、温度を徐々にアップ。
      まず、100℃...問題なし。
        200℃...順調。
       250℃...むむむ?
 なにか臭わないか?
っていうか蓋と本体の隙間から
なにか噴出してるぞ!!
 急いで電源を切り、蓋を少し開けてみてびっくり、炉の内部は蒸気のようなものでいっぱいです。
 それに、炉床に敷いてあった真っ白のはずのセラミックボードが茶色い!
(下の写真は、後に炉から取り出したボードです)

 実は、この茶色い部分。指でほじくると、ぼろぼろと崩れるんです。明らかに強度が落ちています。炉床のボードは多少軟化してもかまいませんが、同じセラミックボードで出来ている蓋が軟化したらひとたまりもありません。そこで、恐る恐る蓋の表面を覆うコーティングを剥がしてみました。

 どっひゃ~っ! 中もまっ茶色です!!

(それにしても、このコーティングに生じたヒビも問題だなあ)
 炉内に何か燃えるものがあって燻されたのでしょうか?だって、耐熱温度1260℃のセラミックボードが燃えるはずないですし。
 最初に疑ったのが、ニクロム線の周りに防錆用の塗料などが塗られていて、それが燃焼したのでは、ということ。でも、それは違いました。なぜならば、セラミックボードの以外のレンガの部分が全くきれいなままだったからです。
 次に疑ったのが、炉内に充満していた水蒸気です。この出所はすぐに分かりました。セラミックボードを張り合わせたとき、その隙間に大量に塗った接着剤の水分が、乾燥せずに残っていたのです。この水蒸気とボードが反応して茶色になったのでしょうか。
 早速、別の小さな電気炉の内部にボードの断片を入れ、同時に内部を水蒸気で満たして加熱して見ました。そうしたら、300℃あたりでまっ茶色に変色しました(下の写真の中央のピースは、水蒸気を出させるために水をいっぱい吸わせたボード。この子は水分のせいで温度が上がらず、変色しなかった)。やはり、変色と軟化の原因は水蒸気だ!憎き水蒸気!!

 実は、今日までその仮説を信じていたのですが...
 セラミックボードは、300℃付近で、必ず茶色になることが分かりました。業者さんに状況を知らせるメールを出したら、回答がありました。曰く、
「ボードは有機原料を含有しているので低温の時は茶色になり、さらに炉内温度が500~600℃以上になると白色になります。使用上は何ら問題ありません。」
 そうだったんですか。普通に起きる現象だったんですね!試しに、小さな炉でセラミックボードの破片を加熱してみたら、300℃あたりで茶色になりました(水分が無くても)。そして、600℃で、再び白くなりました(下の写真左→右)。

 そして、もう一つの事実を知りました。セラミックボードは、加熱すると柔らかくなってしまうということです。加熱前は固めの凍み豆腐程度ですが、加熱後は指でぐずぐず崩れるコロッケくらいでしょうか。これも仕方ないようです。
(下の写真は、様々な条件で600℃まで加熱したボードの断片です。指で簡単に粉々になります)

 まずは、原因がはっきりしてほっとしました。軟化してしまったボードを上手に使っていくしかありません。幸い自重が軽いので、無茶をしなければ今すぐ破損するということは無さそうです。後は、ベタックを表面に塗り塗り、強度アップを図ろうと思います。
 下の写真は、蓋内部に残った水分を飛ばすために、蓋を少し開けて通電し、徐々に温度を上げているところです。今日は400℃まで上げました。
 ちなみに、最初に感じた異臭は、ボード内の有機原料の燃焼する臭いだったようです。以後、だんだんと臭いは減っています。

大型電気炉の制作 <その7.細部の造作>

 電気炉制作も終盤です。細かい細部の造作が中心です。
 まず、炉の内張りです。20mm厚のイソウールボードを内寸に合わせて切断し、炉床と側面に敷きつめます。

 次に覗き窓です。レンガを削り作ります。取り外さないと炉内部が見えないただの「栓」のバージョンと、中に透明雲母板を貼り付けて、装着したまま見えるバージョンとの2種類を作りました。

 次に絶縁ケーシングです。蓋上面には高温・高電圧部分があるので、危険防止のため、トタン板でケーシングします。ホームセンターで3×6尺の板を買ってきてブリキ鋏でカットして作りました。サイド部分には鎧戸風の通風孔が付いています。

 一応、完成した姿です。これから、種々のテストに入ります。

 テスト1:ガラスと、イソウールボード、ベタック#900との相性テスト
溶けたガラスは、様々なものにくっ付きます。また、はじいて付かない相手もあります。炉の床材であるセラミックボードにガラスが付くのか付かないのか、また、コーティング材であるベタックに付くのか付かないのか。常温硬化したベタックと他の耐熱材との融着はないかなど、あらかじめ知っておかなければなりません。
 前から使っている小さな炉に、テストピースを並べ、800℃まで上げてみます。

 結果は、少し見難いですが、下の写真の通りです。左から、
 1)常温硬化したベタックはレンガに融着しない
 2)常温硬化したベタックどうしは融着しない
 3)セラミックボードにガラスは少しこびり付く
 4)ベタックにガラスは激しくこびり付く
でした。実際に、この炉を使ってフュージングする場合、床面には離型紙(セラフォーム)を敷かないといけないようです。

 これから、しばらく様々なテストを重ね、改良していく予定です。

大型電気炉の制作 <その6.温度コントローラの制作>

 昨日今日と涼しくて、作業に適しています。また、合間に神社に行き、夏越の大祓えに参加してきました。
 まず、蓋を開け閉めする「取っ手」作りです。飾りのような存在なので、手持ちの木材で適当に作りました。

 しかしこの蓋。重量が20kgもあって、片手で開けるのは不可能に近いんです。そこで考え出したのが、ウィンチとワイヤーによる巻き上げ方式。ウィンチは、マリーンスポーツ用で、ボートを陸に引き上げる時使うヤツを、ネットオークションで安く手に入れました。付属のワイヤーは太すぎるので用いませんでした。プーリとワイヤーはホームセンターで買いました。
 ・ワイヤー付きハンドウインチ:850LBSブレーキ(ロック)機構付き ¥2,400
 ・滑車:32mm ¥252
 ・ワイヤー4m+停め金具 ¥900

 これを、やぐらに張り巡らして、女性でも簡単に開閉できるカラクリを作りました。くるくる回すのが面白いらしく、高所作業担当者は、しばらく遊んでいました。

 さて、次に電気関係を攻めることにします。まず、温度センサーを蓋の中央に取り付けます。これは、一般によく用いられるKタイプ熱電対です。
 ・熱電対: シマデンTD-11S-048150KC51-0 ¥3,500

 温度コントローラは、プログラム温度調節計とかプロコンとか言われるもので、複雑で長時間の温度履歴を必要とするガラス工芸では不可欠です。
 今回は、調節計として理科工業製のREX-P48を、またこの調節計によって大電流をON/OFFするSSR(ソリッドステートリレー)としてシマデン製PAC03Bを用いました。また、ケースは市販のスチール製道具箱を加工して用いました。
 REX-P48は、8セグメント動作を2パターンプログラムできる上、電気炉の温度特性を自動測定して最適な制御特性(PIDゲイン)を算出するオートチューニング機能があります。
 ・プログラム温度調節計: REX-P48FK22-V ¥35,000
 ・SSR: PAC03B-040-20 ¥9,200
 ・スチール道具箱 ¥1,300


 スチール道具箱に換気用と配線、調節計用の孔を開けます。とにかく大きな音がでるので、ご近所に気兼ねしてひやひやです。

 配線は、端子をカシメて、端子板にネジ止めする形で行います。

 そして、出来上がりです。まだ動作テストはしていませんが、見た目はまあまあです。色々な制御盤を制作していた学生時代(20年前)を思い出しました。

 安全装置は、安全ブレーカ、温度ヒューズ等を購入していますので、テストを重ねながら装備していく予定です。また、現在使用中の3KW電気炉を取り付けたとき電気工事屋に加工してもらったコンセントから、電力は供給します。

大型電気炉の制作 <その5.電熱線の取り付け>

 蒸し暑い中、今日も作業です。朝一番で近くのホームセンターに行き、ブロックを6個購入。実は昨晩も行ったのですが、閉店直後でした。
 いよいよ、パーツを最終設置場所であるスチールテーブルの上に置いていきます。
 1)鉄板
 2)ブロック
 3)レンガの炉床
 4)レンガの側面
 5)蓋
 6)蓋フレーム
の順で、設置してみました。

 蓋フレームは、蓋の上に付いたアングル材の井桁で、蓋の補強と蝶番との連結材を兼ねます。このフレームの位置や角度を蓋に合わせて微調整して、さらに蝶番にネジ止め孔をあけます。

 蝶番の具合を確かめた後、一旦蓋を外し、ステンレスネジで、蓋と蓋フレームを固定します。このネジは、800℃の高温に曝されるので、どこまで保つかわかりません。ダメなら、また対策を考えます。

 しかし、このところ1日に2回はホームセンターに行きます。別に、家のエアコンが動かないから時々涼みに行っている、というわけではありません。あまりよく考えずに衝動的に行くので、買い忘れが多いんです。
 凹みます。今日この記事の時点で、すでに2回行っています。2回目は腹いせに、玄米の精米もしてきました。
 気を取り直して、蓋に電熱線を着けます。電熱線は、ニクロム線と、より高温に適したカンタル線というのがポピュラーです。今回は廉価で扱いやすいニクロム線を用います。
 ヒーター用ニクロム線:φ2.0、10.53Ω、φ15mmコイル密着巻き長1.5m:¥19,570
 この炉の心臓部はズバリ蓋です。蓋に電熱線が着いているトップファイヤー方式だからです。電熱線は、電材屋に仕様を伝えて、コイル状に整形して収めてもらいます。このコイルは密着巻きしてあるので、実用長さに(3倍程度)に引き伸ばして用います。今回は、手で5.3mに引き伸ばしました。そして、蓋の裏側に合わせて曲げておきます。

 次に、蓋に電熱線を固定するステイ(特製釘)の制作です。材料は同じφ2.0のニクロム線です。これを120mmずつ41本カットして先をU字に曲げておきます。

 次に蓋にステイを通す孔をあけます。長さ70mmのロングビットが無かったので、竹串をビットにしてあけました。セラミックボードは柔らかいんです。電熱線を蓋の裏に描いた道筋に沿って、ステイを使って固定していきます。

 ステイは裏で(というより蓋の表側で)L字型に曲げて固定します。

 41本全てのステイを使って、電熱線を固定し終わりました。これを、再びやぐらに設置し、蝶番で固定します。表側に出っ張ったステイは高温で、大電圧が掛かりますので、ベタックでコーティングしておきます。

 最後に、電熱線の抵抗値を調べておきます。高校時代に買ったテスターは、どうも正確に測れません。でも、10Ωチョイありそうなので、後は電材屋を信じて使うことにします(実は10Ωを切ると危険です)。

大型電気炉の制作 <その4.セラミックファイバーのコーティング>

 昨日、一昨日と、義妹の引越しを手伝ってきました(ウチの貨物車で)。
 それはそれとして、気になるセラミックファイバーボードの接着結果ですが...
 えー、一応着いているようです。少し引っ張ってみましたが、剥がれませんでしたので。お高いボードなので、破壊検査をする気にはなれず、ひとまずOKとしました。
 それで、前にも書きましたが、結構気になっていたのが、セラミック繊維が肌に着いたときのチクチクです。これは、今後の運用時のことも考えて、対策を講じることにしました。
 大枚はたいて、耐熱コーティング材を発注しました。ベタック#900Bというやつです。これまで使ってきた接着剤の#900Cと同じシリーズです。値段も同じ5kgで6,500円です。
 電話で商社の担当者が、
「BはCに比べて粘性が大分低いので、薄く塗るのに適していますよ。コーティングにはいいですよ。」
とのこと。
 (うーん、でもなあ、Cが少し余ってるから、これを薄めて良しとしようか)
 (でも、専用材の方がいいよなあ。ケチって後で後悔したくないもんなあ。商社もああ言ってるし)

 で、注文しましたBを。それが、今朝到着。早速缶の蓋を開けて、
 (あれれっ...)
 (これ、Cじゃないの? でも若干水っぽいなあ。)

 Bは、Cを少し水で薄めた感じでした。Cが蜂蜜なら、Bはホットケーキにかけるシロップです。塗り心地は少しやり易いです。でも、Cだって薄めれば同じになります。
 (やっぱり、余ったCでも良かったなあ。6,500円あったら、プールに16回も行けたなあ。)
 でも、折角買ってしまったので、気を取り直して、塗ることにしました。ファイバーボードで出来た蓋を全面コーティングし、繊維が飛散しないようにしました。現在、アスベストが問題になっていますが、将来、セラミック繊維が問題にならないとも限りません。用心するに越したことはないでしょう(ただし、イソライト社は、セラミックファイバーは安全と言っております)。

 コーティングすると薄いチョコレートのようです。コーティングが乾くまでの間、ホームセンターにやぐらを組むためのアングル材を買いに行きました。帰ってきて、やぐら組み。
 設計図を見ながらボルトで繋いで行きます。高所作業は、若くて身軽な人が担当です。

 私は、アングルの切断や、蝶番の穴あけ等、地味な金工担当です。

 やぐらは、炉全体を保持し、重い蓋の開け閉め機構と、ラックの役目をします。

大型電気炉の制作 <その3.蓋の枠付け>

 今日は、まず炉床の側面です。側面の高さはレンガ1個分の114mmです。このレンガを床に接着するのではなく、ただ並べ、隣同士のみ接着します。つまり側面は、取り外し自由にしておきます。

 さて、さて、次の作業に移ろうとして...昨日接着した蓋の様子を見て愕然!
まったくボード同士が着いていない!!です。
 どうも積層後の加圧が不十分だったようです。内部はほとんどスの状態で、空洞が出来ていました。手で引き離すと容易に剥がれてしまいました。
 気を取り直して、接着しなおしです。
 今度は、接着剤を水で薄めて、刷毛で平坦になるように塗布しました。そして昨日とは違い、積層後の加圧は、手で部分部分行っていきました。全体に広く加圧しても、接着面のわずかな凹凸とボードの反りで、密着しないのです。

 ついでに、蓋の枠材も接着しておくことにします。この枠は幅85mmで切り出した厚20mmのファイバーボードです。接着作業も、だんだんと要領を掴んできました。接着剤は少し水で薄め、できるだけ平坦に塗布します。そして、加圧は「部分加圧」。


 十分に手のひらで加圧したら、重しのコンパネを載せて、今度は2日くらい乾燥させるつもりです。次に見たとき離れていたら泣きます。

大型電気炉の制作 <その2.蓋材の接着>

 2日経って、レンガの接着剤がほぼ硬化したので、裏返してみました。ところが、思った以上にレンガ同士の隙間に接着剤が入っていませんでした。そこで、裏からもこの隙間に耐熱接着剤を充填しました。

 さて、今日やることは、蓋の基本的な制作です。蓋はなるべく軽くなるように、レンガは用いず、セラミックファイバー(イソウール)ボードを用いることにしました。これは、アルミナとシリカを主原料としたファイバーに無機バインダーを添加して板状に整形したもので、耐火炉の内張り材として広く用いられています。
 今回使用するのは、イソウールボード1260という製品で、1260℃の耐熱性があります。今回は、20mm厚と50mm厚の2種類を用います。ちなみにボードの価格は以下の通りです。
20mm厚‥4枚で16,000円
50mm厚‥2枚で25,000円
(サイズ:600mm×900mm)


 このボードはカッターナイフで簡単に切れます。というより、かなりもろいので端のほうを持つと、自重で折れてしまいそうです。また、取り扱い上難儀したのが、チクチクです。目に見えないくらい細くてこまかいセラミックファイバー(繊維)が、皮膚に付くと突き刺さって痛いのです。ですから、途中からゴム手袋を装着しました。また、空気中に舞ったファイバーを吸わないようにマスクもしています(どこまで効果があるかわかりませんが)。

下の写真が、蓋に用いる切り終わったパーツです。

 このボードも、20mmと50mmのボードを耐熱接着剤(ベタック#900C)で接着し、合計70mmの厚さに仕上げます。まず20mm厚の方のコグチに接着剤を塗り、1037×690mmの大きなボードにします。

 この上に、50mmのボードを積層するのですが、これがなかなか上手くいきません。このボード、板とはいえ基本的に繊維の塊ですから、接着剤を塗ると水分だけを吸い上げてしまうのです。すると接着剤が見る見る乾燥してゆき、ヘラで容易に伸びないし、固まりだすわで大慌てです。広い面積に、しかもボードの両面に塗らなければならないので、霧吹きで水分を補給しながら、焦りながら作業しました。

 なんとかボードに接着剤を塗り終わり、積層し、上からコンパネやら、未使用のレンガやら、小学生のときからの愛読図鑑やらを重し代わりに載せ、一段落です。しかし、不安です。ボードの両面に塗った接着剤同士が密着していないような気がするのです。それでも剥がれることはないとは思いますが、もっとスマートに作業したかったです。最初から、接着剤を水で薄めて、刷毛で塗ればよかったかも知れません。

大型電気炉の制作 <その1.炉床の制作>

 この春から計画していた、というより漠然と欲していた大型電気炉(キルンとか電気窯とも言います)。これを、自作することにしました。このシリーズは、少し詳しい制作レポートにしたいと思いますので、請うご期待です。
 ステンド関連の資材を輸入している商社に、希望のサイズの炉を見積もってもらったところ、なんと100万円以上もするというのです(ちなみにドイツ製)。これでは何年経っても買えません。そこで、昔取った杵柄、技術者の血が騒ぎ、自作することにしました。
 主な仕様は以下の通りです。
<目 的>50cm×80cmの板をフュージングできる
<温 度>最大900℃/常用775℃
<出 力>3.8kW(単相200V×19A)
<内容積>幅87cm×奥行き54cm×高11cm
<温度調整>プログラムコントローラ使用、8セグメント×2プログラム
<温度センサ>Kタイプ熱伝対
<加熱方式>トップファイヤ
<予 算>20万円

 さて、ネットを使った綿密な材料調査の末、以下の材料を使うことにしました。
<炉床・側面>耐火断熱レンガLBK-23+セラミックファイバー(イソウール)ボードの積層。85mm厚。
<蓋>セラミックファイバー(イソウール)ボードの積層。70mm厚。
<耐熱無機接着剤>ベタック#900C
<電熱線>φ2.0ニクロム
<蓋駆動系>ワーヤー+ウインチ

 今日の作業は、炉床の制作です。主材は耐火断熱レンガです。このレンガ、空気をいっぱい含んでいて、凍み豆腐のようにスカスカです。しかももろいです。この気泡が1300℃の耐熱性を生み出します。ちなみに10個あたり4,900円。

 まず、このレンガを切断します。百円ショップで買ってきた貧相な鋸でも、さくさく切れます。柔らかいとは言え、相手はセラミックですから、高価な鋸を使うのは止めましょう。
 切断面は、平らな木の板にこすり付けて滑らかにしておきます。

 次に、このレンガを格子状に接着して、1枚の大きな板にします。接着には普通は耐熱モルタルというものを使うのですが、今回はキロ単価が少し割高ではありますが耐熱接着剤を使うことにしました。理由は、セラミックファイバーボードの接着にも流用したいがためです。モルタルのような業務用資材は、最小ロットが25~30kgと莫大です。私の必要量の数倍買わされるので、あまり色々な種類を買いたくなかったのです。
 1100℃の耐熱を有する耐熱接着剤(ベタック#900C)は1缶5kg、6,500円也。この蜂蜜程度の粘性の接着剤をレンガに塗ります。次に、レンガの配置図が実寸大で描いてある作業台の上に並べ、接着していきます。

 こうして27個のレンガを並べ終わり、隙間にも接着剤を充填します。そして、半渇き状態で、ヘラで余分な接着剤をそぎ取ります。水溶性の接着剤は2日くらいで初期硬化し、運用中の加熱で本格硬化します。

 それにしても、初めてとはいえ、接着剤のはみ出しが見苦しいです。