大型電気炉の制作 <その9.テスト2>

 いよいよ実用テストに入ります。
 まず、グリザイユの焼付け温度の目安600℃です。グリザイユの焼付け温度は、ガラスで両持ち梁を作り、そのガラスが軟化して中央がたわみだす温度です。
 スパン4cmの両持ち梁を5セット作り、炉床の中央と4隅に置きます。これで、様子を見ながら600℃まで上げていきます。

 室温から600℃まで、わずか25分で到達しました。外部の周囲(蓋や側面、底面)を触っても全く熱くありません。かなりの断熱性能です。

 その後、600℃を5分間保持し、あとはOFFして自然冷却しました。サンプルのガラス梁は、炉床中央に置いた物は大きく7mmたわみ、4隅のはわずかに2~4mmたわみました。このままでは、温度ムラがありますので、運用時には、焼付け温度手前で10分ほど保持して、温度ムラをなくさなければならないことがわかりました。

 次に、フュージングの目安温度である800℃まで上げてみます。サンプルは、2.5cm×1cmのフューザブルガラスを2枚重ねたものです。これを炉床中央と4隅に置きます。

 800℃までは、45分で到達しました。その後800℃を10分キープし、OFFしました。この時点で外周部を触ってみましたが、温かい程度です。

 冷却後サンプルを取り出してみたら、ほぼ全部が同程度に丸くなりました。これなら実用上問題ありません。温度ムラも小さいことがわかります。

 ちなみに、冷却中に遅れて周囲に熱が伝わり、500℃付近に下がった時点で、周囲は触れなくなりました。
 テストの結果、問題点も浮かび上がりました。
 (1)セラミックボードに塗ったコーティングのベタック#900Bは、高温でひび割れて反り返ってしまいました。恐らくこのまま使い続けていたら、剥がれて落ちてきてしまいます。作り方を変えるか、コーティング材は他のものにした方が良さそうです。

 (2)一過性のことですが、最初にセラミックボードに熱が加えられたとき、250~300℃で内部の有機原料が燃焼します。このとき、臭くて目に沁みる煙が出るので難渋します。換気を確りしましょう。ただ、2回目の加熱からは煙は出ません(燃え尽きた場合)。
 今後も、使いながら問題点が出てくるかもしれません。ですが今の時点で、一応実用レベルのものが出来上がったのは嬉しいです。
 掛かった費用は以下のとおりでした。
・材料代:178,000円
・買い増した工具代:4,000円


 <<<実は>>>
 実は電熱線の抵抗値が気になって、新しいテスタを買って計ったんです。そうしたら、10.1Ωでした。200Vで19A流すためには、200÷19=10.53Ω必要なんです。つまり、0.43Ω少なかったんですね。抵抗値は、大きい分にはあまり問題ありませんが、小さいと事故に繋がる恐れがあります。
 そのことを電材屋さんに電話で言ったら、担当者は「製造誤差範囲内ですね。最初に『抵抗値重視』と仰ってくれれば、相応の対応が出来たんですが。」と言われました。その後、電話を上司といわれる人と代わってもらい、交渉の結果、なんとか足りない分0.5Ωほどを、送ってもらうことになりました。
 この経験から、
 今後電熱線を買うときには、電材屋さんの製造誤差を事前に聞いておき、その分をプラスして抵抗値で発注することが望ましいと思いました。また、多少割高になっても長めに発注し、ユーザーサイドで所望の抵抗値に切り直すのが間違いないでしょう。
 この記事を読んでいる電材屋さんがいましたらお願いしたいのは、
 コイルを密着巻きしていて、そのままでは仕上がり抵抗値を測定するのが難しいのであれば、治具でわずかに引っ張りながら計るなりして、「出荷前検査」をして欲しいです。

大型電気炉の制作 <その9.テスト2>” への2件のコメント

  1. はじめまして。 私もガラスでフュージングにチャレンジしようと思っており、こちらのサイトにたどり着きました。 ご自身で大きな炉を製作するとはなかなかですね。
    電気の抵抗についてなのですが、抵抗値を計測されたのはヒーターが常温のときでしょうか? ヒーターの温度が上昇するにつれて、抵抗値も上がるのではないかと思いますが、いかがでしょうか?
    また電流についても交流電源を使用されていらっしゃるようですので、コイル状のヒータであれば、その分のインダクタンスも加味して考える必要があるのではないかと思います。
    どちらも安全側への対応を取られていらっしゃるようなので大丈夫と思いますが、ちょっと気になりましたので、、、。

    • 仰る通り、常温+直流で測定してOKであれば、高温+交流では尚安心と言うことですね。ですが、本当は安全率を考慮して、もっと抵抗値は大きい方が良かったと思っています。

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