大型電気炉の制作 <その8.テスト>

 昨日から、テストに入っています。
 まず、本ちゃんの200Vを流す前に、100Vで100℃まで上げて、漏電、ケーブルの発熱、温度コントローラ不良、異臭、発煙等の無きことを確認しました。
 次に200Vで、同様の確認。そして、温度を徐々にアップ。
      まず、100℃...問題なし。
        200℃...順調。
       250℃...むむむ?
 なにか臭わないか?
っていうか蓋と本体の隙間から
なにか噴出してるぞ!!
 急いで電源を切り、蓋を少し開けてみてびっくり、炉の内部は蒸気のようなものでいっぱいです。
 それに、炉床に敷いてあった真っ白のはずのセラミックボードが茶色い!
(下の写真は、後に炉から取り出したボードです)

 実は、この茶色い部分。指でほじくると、ぼろぼろと崩れるんです。明らかに強度が落ちています。炉床のボードは多少軟化してもかまいませんが、同じセラミックボードで出来ている蓋が軟化したらひとたまりもありません。そこで、恐る恐る蓋の表面を覆うコーティングを剥がしてみました。

 どっひゃ~っ! 中もまっ茶色です!!

(それにしても、このコーティングに生じたヒビも問題だなあ)
 炉内に何か燃えるものがあって燻されたのでしょうか?だって、耐熱温度1260℃のセラミックボードが燃えるはずないですし。
 最初に疑ったのが、ニクロム線の周りに防錆用の塗料などが塗られていて、それが燃焼したのでは、ということ。でも、それは違いました。なぜならば、セラミックボードの以外のレンガの部分が全くきれいなままだったからです。
 次に疑ったのが、炉内に充満していた水蒸気です。この出所はすぐに分かりました。セラミックボードを張り合わせたとき、その隙間に大量に塗った接着剤の水分が、乾燥せずに残っていたのです。この水蒸気とボードが反応して茶色になったのでしょうか。
 早速、別の小さな電気炉の内部にボードの断片を入れ、同時に内部を水蒸気で満たして加熱して見ました。そうしたら、300℃あたりでまっ茶色に変色しました(下の写真の中央のピースは、水蒸気を出させるために水をいっぱい吸わせたボード。この子は水分のせいで温度が上がらず、変色しなかった)。やはり、変色と軟化の原因は水蒸気だ!憎き水蒸気!!

 実は、今日までその仮説を信じていたのですが...
 セラミックボードは、300℃付近で、必ず茶色になることが分かりました。業者さんに状況を知らせるメールを出したら、回答がありました。曰く、
「ボードは有機原料を含有しているので低温の時は茶色になり、さらに炉内温度が500~600℃以上になると白色になります。使用上は何ら問題ありません。」
 そうだったんですか。普通に起きる現象だったんですね!試しに、小さな炉でセラミックボードの破片を加熱してみたら、300℃あたりで茶色になりました(水分が無くても)。そして、600℃で、再び白くなりました(下の写真左→右)。

 そして、もう一つの事実を知りました。セラミックボードは、加熱すると柔らかくなってしまうということです。加熱前は固めの凍み豆腐程度ですが、加熱後は指でぐずぐず崩れるコロッケくらいでしょうか。これも仕方ないようです。
(下の写真は、様々な条件で600℃まで加熱したボードの断片です。指で簡単に粉々になります)

 まずは、原因がはっきりしてほっとしました。軟化してしまったボードを上手に使っていくしかありません。幸い自重が軽いので、無茶をしなければ今すぐ破損するということは無さそうです。後は、ベタックを表面に塗り塗り、強度アップを図ろうと思います。
 下の写真は、蓋内部に残った水分を飛ばすために、蓋を少し開けて通電し、徐々に温度を上げているところです。今日は400℃まで上げました。
 ちなみに、最初に感じた異臭は、ボード内の有機原料の燃焼する臭いだったようです。以後、だんだんと臭いは減っています。

大型電気炉の制作 <その8.テスト>” への6件のコメント

  1. 温度が高いだけに、テストもドキドキですね。
    しかし夏場の電気炉を使ったお仕事は、大変ですね。
    蒸し風呂状態ですか?
    サウナに入っている気分かしら?
    水分補給して、お仕事してね。

  2. ラ フランスさん、こんにちは。
    フランスは梅雨が無くていいです。
    今年の日本は空梅雨ですが、昨日は久しぶりに雨で、涼しかったです。
    私も、この炉を作るにあたって、「暑くて厳しい職場になるなあ」と思っていたのですが、案外断熱性能が良く、内部温度が400℃程度でしたら、外側は手で触れるほどです。
    これから、600℃、800℃と温度を上げてテストしますが、そうなると、暑くなってたまらんかもしれません。
    MIXIで、ラ フランスさんのフランスでの生活を垣間見るのが楽しみです。今後も楽しいレポートをお願いします。

  3. この制作レポートはとてもドラマチックだね。
    このレポートを読んで、制作にチャレンジする人がきっといるだろうね。その人たちのためにも完成させてください。
    人ごとだから簡単に言えるんだけどね。(^_^)

  4. 癒さん ありがとうございます。
    一喜一憂の制作でした。お金も掛かっている上に、高温を扱うので緊張もしました。
    これから、新しい作品を、この設備から生み出したいです。

  5. セラミックファイバボードは、有機物を含んでいますので、加熱初期は焦げ目がつきます。温度が上がるに従い、この焦げ目もなくなることはご存知のとおりです。そこで強度が落ちたとのことですが、この場合は硬化剤(リジタイザー)を噴霧してください。ベタックでは剥がれます。
    このような手間をかけたくない場合、イソライト社にはリジタイズ焼成処理品がありますので、その場合は焦げもないし、柔らかくならないです。

  6. yossyさん こんにちは。
    これは有益な情報をありがとうございました。
    確かにベタックは亀裂が入って、剥がれ落ちてしまいます。
    硬化剤は、次回メンテナンスのとき、活用させていただきます。

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